愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
「そこまでにしてください、孝明様」
二人のやり取りに飲み込まれすぎていて、私はすっかり周りが見えてなかった。
首にひやりと冷たいものが当たっている。
しかもそれは銀色の凍てついた光を放っている。
ちらりと視界の端に映るそれに、私は違う意味で唾を飲み込んだ。
折角危機を脱したと思ったのに。
どういうわけか。
思いっきり危機のど真ん中にいる。
私の耳元で香純さんの声が聞こえる。
首元には果物ナイフが突き付けられ、それはいつ私の喉元を掻き切っても大丈夫なくらい薄皮一枚のところにあった。
「これ以上、邪魔をするのであれば。
あなたの大事な人を傷つけることになりますがよろしいですか?」
そう言って香椎くんを脅す香純さんを、香椎くんは首だけ向けて睨みつけた。
「それはそのままおまえに返す。
彼女を傷つけてみろ。
おまえが身内であろうと、オレは構わず半殺しにする」
「元より覚悟の上です」
そう言うとさらにグッと私にナイフを近づける。
香椎くんは大きなため息をつくと、仕方なさげに岳尚から手を離した。
「おまえの『運』なんて所詮『紛い物』じゃないか」
再び勝ち誇ったように、むせる息の下で岳尚はそう告げた。
香椎くんは私の方と岳尚と両方を牽制するように睨みながら「バカが」と吐き捨てて見せた。
「おまえがどんな意図で岳尚に従わざる得なかったか、もう分かってる」