愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~

香椎くんの言葉に、さらに香純さんが動揺しているようだった。

ナイフがほんの少し、私の首から離れる。


今しかないかも……

今だったら香純さんを説得できるかも。


「香椎くんを……信じてくれないかな?」


私が言いだした途端、ナイフと首の距離がもう一度縮まる。

それを見て、香椎くんが私に『余分な話はしなくていい』というような視線を送ってくる。

私を心配してそう言うのは分かるよ、香椎くん。

でも言わなきゃいけない気がするんだよ、私。

ここで言わなくちゃダメだって思うんだよ、私。


「どうしてあなたはそんなにあの男を信じられるの?

あなただって騙された口じゃない?」


痛いところを突かれるな。

騙されたって確かにそうなのよ。

香椎くんは『紫丞』の人間であることも私に黙っていたんだし。

実は『当主』様だってことも黙っていたんだし。

思えば他の誰より私が一番騙されて。

一番おバカってかんじにも思えなくもない。


「うん、そうだよね」


でも私は分かる。


「騙すことと言わないことって同じじゃないよ」


そう。

香椎くんは私を騙すために黙っていたんじゃない。

私を騙すために『正体』を『隠して』いたんじゃない。

それは私を守るためだって今は分かるし。

『騙す』ことと『言わない』ことは違う。

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