愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
「やめて――ッ!!」
香純さんの絶叫が聞こえたけど、私はもう躊躇しなかった。
パラパラ……と。
長い髪の残骸が床に散らばる。
左手には束になった黒髪。
それを彼女に差し出して見せた。
「これじゃダメかな?」
香純さんは両手で口を覆っていた。
目は潤み、さっきまでの威勢はなくなっていた。
「なん……で……」
震えて、震えて。
その場に立っていられなくなって、彼女がストンとその場に崩れ落ちる。
その場に顔を伏せて彼女は大声で泣きじゃくった。
そんな中、一人だけ大きな笑い声を立てる人物がいた。
振り返らなくても分かる。
岳尚だ。
「たかが髪の毛じゃないか!?
そんなもんで信じてもらえるなんて思ってるなんて、綾渡セリ。
おまえバカじゃねぇ?」
岳尚がそう放った瞬間。
彼の身体が激しい音を立てて壁に打ちつけられる。
「香椎くん!!」
香椎くんがそれまで以上に怒りを露わにした顔で、岳尚を壁に押し付けていた。