愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~

「たかが髪の毛だと?

あれだけ伸ばすのにどれだけの時間が必要だったか、おまえ分かって言ってるのか?」


低い声。
静かな声。

荒立てることなく、腹の底から響いてくるような怖い声で香椎くんはそう問う。


「女の髪は命とか……ぬかすんじゃねぇよな?

そんなもん、古すぎるだろうが!?」


負けじと岳尚が抵抗する。

けど、香椎くんはその抵抗すら許さないほど強く彼を壁に押し込める。


「それ以上言ってみろ。

このまま首の骨折って、二度と自由にしゃべれなくしてやる!!」


脅しじゃないと思えるほど、香椎くんの言葉もその姿も殺気で溢れていた。

あまりのことに、岳尚も口をつぐんだ。

そんな二人の間にゆっくりと割って入った黒い人影に、香椎くんはゆっくりと顔を向けた。


「孝明様、ここから先はその手の方にお任せいたしましょう」


そう言って香椎くんの手を岳尚から離させる。

黒髪の執事の言葉に、香椎くんは乱暴に岳尚の首から手を離した。

するすると滑り落ちるように岳尚もまた、その場にしゃがみ込んでしまった。


香椎くんが乱れた服を払いながら直すと同時に、執事さんは部屋の入口の扉をゆっくりと開けに向かった。


ガチャリと鍵の外れる音がし、そこからダークスーツに身を包んだ男の人たちが5、6人入ってくる。

その人たちに執事さんは「ではよろしくお願いします」と丁寧に頭を下げる。

すると「御苦労さまでした」と先頭で入って来た中年の男性が声をかけ、そのまま足早に香椎くんと岳尚のほうに向かって行った。

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