愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
「でも、香純さんは『春野』って名乗ってたでしょ!?」
そう、香純さんは『宇津木香純』じゃなく、『春野香純』って言ってたじゃない!?
「それで分かるのに時間かかったんだよ。
春野は『母方』の名字だったから。
香純の正体を九条が小細工していろいろ隠してたから、突き止めるまでにわりと時間がかかってね。
さすがばーさん、そういうワル知恵だけは年とっても健在っていうとこかね」
大きなため息とともに香椎くんは苦笑して見せた。
いや、一番悪いの自分のおばあさまで。
それにいろんな人が巻き込まれて。
九条もそれに乗せられて、追い詰められて。
「香椎くんのおばあさまが一番悪いのに……とがめられないのっておかしくない?」
さっきから話を聞いてるけど、香椎くんのおばあさまに対しての制裁みたいなものがまーったくないのに小首を傾げたくなる。
「それならこれからだよ」
香椎くんはそう言うとふぅっと大きく息をついた。
「あの人の鼻をへし折るのはオレの役目だって思ってるからね。
キミと香純には、その立会人になってもらうつもりだよ」
その言葉に香純さんは泣くのを止めて、驚いたように顔を上げた。
「大丈夫。
キミとセリはオレと毅臣が絶対に守るから。
安心して一緒に来てもらいたい」
ポンポン。
そう言って香椎くんは香純さんの肩を叩くとゆっくりと立ちあがり、スッと私の前に立った。