愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~

香椎くんの大きな手がそっと私の首に触れた。

髪がなくなったから露わになったその首を香椎くんが優しく抱き寄せる。


「こんなことさせたくなかった……」


悔しそうな声が頭の上から降り注ぐ。


「私は……後悔してないよ」


答えた私の身体をそっと離すと香椎くんは私の目を覗きこみ、「オレが切るよ」と言った。


「オレがキミの髪を整える。

紫丞の家に行くのはそれからだ……」


そっとそっと私の髪に触れ、香椎くんはそう言った。


「孝明様って呼んだ方がいいのかな?」


香椎くんの目の中に私が映っていた。

ざんばら頭っていうのか。

本当に勢いだけで切ったから、髪の長さがバラバラになっている。


「香椎くんでいいよ。

オレの母さんの名字だから……」


だから『香椎くん』は間違ってないんだと。


そう香椎くんは耳元で囁いた。


「でも孝明さまなんだね?」

「毅臣はオレの相棒の名前なの」

「あの……執事さん?」

「そ。

喜多川毅臣(きたがわたけおみ)。

よかったら『タケ』って呼んでやって」

「複雑」

「だよね」


香椎くんと顔を見合わせて私たちはクスリと笑いあった。
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