愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
好きだけじゃダメっていうのがよくわかる。
香椎くんは香椎くんだけど香椎くんじゃない。
香椎くんは紫丞の御当主様。
私は……
「結婚は無理だよ」
緩みそうになる涙腺を必死に我慢して。
震えそうになる唇を必死にかみしめて。
私は少しだけ笑いながら香椎くんに告げていた。
「私は『紫丞孝明』の『妻』にはなれないよ」
香椎くんは私の答えがわかっていたように、フッと微笑んで見せた。
「だろうね」
そう言うと、ゆっくり私に近づいてくると。
「今だけは」
耳元に落ちた吐息にも似た囁き。
香椎くんの大きな胸の中に私は抱きいれられる。
「キミを愛している一人の男でいさせてくれ」
背中に回る香椎くんの腕が力を帯びて、私をギュッと力強く抱きしめる。
鼓動が聞こえる。
呼吸がすぐそばで聞こえる。
体温が彼のすべての肌から伝わって、私の心の中にしみてくる。
泣きたい。
泣いてしまいたい。
泣いて泣いて。
疲れるまで彼の腕の中で泣いてしまいたいと思った。
けれど……