愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
逃げ込むように自室に滑り込んだ。
ホテルのスィートルーム並に広い部屋が私は大嫌いだった。
ふかふかの毛の長い絨毯も、上品な調度品も、なにもかも。
そこにあるものが嫌だった。
そして今、その嫌悪感はさらに増し、飛びこんだキングサイズのベッドさえ、心地よさを運んではくれない。
「嫌いだ……」
枕に顔を押し付けてそう呟いた。
嫌いなのはなんだろう?
立場?
自分?
それとも……
「大っきらい!!」
思い浮かぶ嫌な笑顔を頭の隅に追いやろうと、必死に枕に顔を押しつけながら必死で呟いていた。
それでも……
嫌いだと思う彼の名前を私は口にのせることだけは出来なかった。
その理由はあやふやで……不安定で、分からないことだらけで。
ただギュッと強く目を瞑り、私は自分の視界から現実を追いだしたのだった。