愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~

日本を離れることで。
綾渡の家から離れることで。

いろんなことを整理したいと思った。
いろんなことを遠くから見てみたいと思った。

たぶん、このままここにいたら、私はずっとそれに囚われてなにもできないと思ったから。


それに……


「ほんとうに紫丞のお坊ちゃまには言わないままでよろしいのですか?」


雪路さんに見透かされたようにそう言われて、私は苦笑いを浮かべた。

あの最後のキスから3か月間。

香椎くんとは連絡一つとっていない。


「いいの。彼、とっても忙しい人だから、余計な心配ごと増やしたくないしね」


紫丞家が今どれほど大変な状況であるのか。

香椎くんがどれほど忙しいのか。


よくよく理解している。


香椎くんは一気に有名人になった。

今まで表に出てこなかった若き当主。
さらにあのルックス。

メディアが放っておくはずもなく……


香椎くんとは会わないのに、雑誌やらテレビやらで香椎くんを見かけないときがないほどだ。


積極的な慈善事業の展開。
大手企業買収。
新規事業への参入等。


この3か月、話題の絶えないことばかりだった。


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