愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
長い、長い廊下を歩き、玄関へと向かう。
玄関には父も。
そして長い間私を見守り続けてくれたいろんな人たちがそこで私を待っていてくれた。
真新しい少しヒールの高いサンダルに足を通す。
それからもう一度背に立つ父たちのほうに向き合って、小さく深呼吸する。
「頑張っておいで」
「はい」
「辛くなったらいつでも戻ってくるんだよ」
「はい」
「おまえの未来を……必ず見つけて帰っておいで」
「はいッ!!」
にっこりほほ笑む父に、これ以上はないほどの満面の笑みを湛えて見せて私は踵を返した。
待っているタクシーに乗り込む私の背中に向かって、大きなエールが飛んでくる。
「お嬢様!! 待っていますから!!」
「お嬢様!! お手紙くださいね!!」
「お嬢様!!」
「お嬢様!!」
走り出すタクシーに向かって、多くの人が駆け寄って手を振ってくれる。
その人たちの姿が見えなくなるまで、私は大きく手を振っていた。
泣いてしまいそうになる気持ちをぐっと押し殺し、「いってきます!!」と大きく手を振っていた。