愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
「だーかーらー。不用意に鳴らさないでくださいねって言わなかったですかね?」
聞き覚えのありすぎる声が前方から飛んでくる。
え?
え?
ええッ!?
なんで?
なんでよ?
なんでなのよ!?
空耳?
私どうかしちゃった?
そんなわけないよね?
そんなことあるはずないよね?
ビービ―けたたましい音を鳴らし続けるテントウムシを握りしめる手が急に汗ばんでくる。
タクシーがゆっくりと路肩に停止する間も、私はそれを運転する相手から目が離せないでいた。
運転手が振り返る。
ドクン。
ドクン。
ドクン。
テントウムシよりも大きな音で激しく私の心臓が鼓動する。
コマ送りのように。
振り返った運転手の顔は、私がさっきまで見ていた巨大看板の人とそっくり同じものだった。