愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
キッと強く睨みつける私に、けれど香椎くんはなんとも柔和なほほ笑みで対応してくる。
やりにくい。
ものっそいやりにくい。
怒っているはずなのに、脳内の違う部分ではなにかとんでもない分泌物が体内へと放射されている気がする。
胸がずんっと重みを増して、彼の笑顔にダウンの悲鳴をあげかけていた。
待て待て待て待て。
私は誰?
綾渡セリ。
冷静になれ!!
「そういうお顔、私だけには向けてくださるのですねぇ。
これも執事の特権でしょうか?」
その言葉に、冷静になろうとしていた私の頭と心が急にアクセルを踏んだ。
急加速する心臓と、血流と脳内分泌物。
それが一気に体へと押し上り、末端まで行き届き、どこもかしこも火照りを覚える。
「さぁ、お着替えなさいませ。
学校に遅刻してしまいますよ」
目の前に制服を突き付けられ、私の視界は真っ白になった。
シミ一つない。
しわ一つない。
真っ白なブレザーが眩しく感じる。
「……わかりました」
なんとか平静を装いながら、それを受け取る。
そんな私に香椎くんは小さな笑みを落とすとひらりと背を向けた。