愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
背中を向けたのはいいけれど、そこから一歩も動かない。
制服を握りしめたまま、数秒待ってみる。
私と香椎くんの間に静かな空気が流れるだけで、まったく動く気配がしない。
待て待て待て待て。
ちょい待て香椎毅臣っ!!
おまえは今、着替えをしろと言わなんだか?
「なにしてるの?」
「はぃ?」
顔だけ私に向ける香椎くん。
何が?とでも言いたげで、こっちが混乱しそうになる。
「着替えたいんだけど」
「どうぞ、どうぞ」
っていうか、コイツ、ほんとに執事なの?
「あなたがいると着替えが出来ないと思うんだけど」
「こんな広いお部屋です。
向こうのクローゼットでもいいではないでしょうか?」
あくまでも出ていかないと?
「お傍を離れるなと仰せつかっておりますから」
悪意のあるような、ないような。
そんな笑みに私はため息しか出てこない。
「わかった……」
半ば諦めるように私は奥のクローゼットに向かったのだった。