愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
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朝から相当ぐったりで、はっきり言ってこうして二人で歩いているのも激しく疲れるんだけど。
ちらりと後ろを見る私は、見て本当に損した気分になった。
なーんとも言えない涼しやかな顔をして歩く香椎くんの姿に、もはや苛立ちというよりも諦めみたいなものがふつふつと芽生えている。
この想いを端的に言ってみよう。
暖簾に腕押し。
糠に釘。
そう。
香椎毅臣というバカ執事につける薬などない。
とにかく、自分のペースを守ること。
それが大事だ。
それが一番だ。
無視だ。
とにかく無視だ!!
「そんなに大股で歩くと、『いつもの』お嬢様『らしく』なくなっちゃいますよ」
いつの間にか私の後方、30センチの距離まで詰め寄った香椎くんが耳元でそう囁いた。
つーか、いらん世話だ、香椎毅臣!!
おまえのせいで『私』が壊れ始めてるんだ!!
テリトリーを侵してくるな!!
「セリさんっ!!」
シッシと香椎くんを追い払おうとしたその時だった。
聞きなれた上品な声が私の耳に飛び込んできた。
その途端、私の背筋はまるで笛を吹かれたみたいにピッと真っすぐに伸びた。