愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
お手柔らかに―とか言いながら、香椎くんの目は違ってた。
媚びもしない。
へつらいもしない。
傅きながらも絶対に相手に服従なんかしてやらない。
むしろ、おまえをオレに傅かせてやんぜーみたいな、わけのわからない威圧というか、そんなもんまで感じずにはいられなかった。
腹の中で何考えてるか分からない点なら、今まで出会った人間たちとそう変わりはしないのかもしれない。
にしても、なんだ、この男は。
執事なのに、執事じゃない。
いや、執事の格好だし、執事の物腰だし、執事の話し方だけども。
「私は容赦いたしませんけどね」
ニッコリキラースマイルは必殺技。
相手を騙すためというよりは、相手に言葉を失くさせるのが目的みたいな。
「っていうか、詐欺じゃんっ!!」
見た目と中身。
全く違った男。
ヒツジの皮を被ったオオカミ、香椎毅臣。
退屈だった日々。
退屈だった時間たち。
胸騒ぎの日々が今、その幕を開けようとしていた。