愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
「なにをなさっているんです、こんなところで?」
呆然と彼女の後姿を見送っていた私の背後から、恐ろしいほど静かにそんな声がした。
そろりと。
はい、そろりとね。
振り返ってみたらば、やはりいっらっしゃいました。
草葉の陰からとは言わないけども……はい。
眉間にしわを寄せた苦い顔の香椎くんが、手を後ろに隠すような格好で私の背後に立っていらっしゃる。
「えっと……ランチ?」
「ほぉ。ランチ?」
なにが言いたい、香椎くん。
文句、説教、その他言いたいことがあるのなら、はっきり言えばいいだろうにこの執事。
「お弁当はどうなさったんでしょうね?」
「ああ……思わず落としてしまって……」
「では、そこの可愛らしいお弁当と山のようなパンとお菓子はなんでしょうか?」
「ああ……それはさっきの可愛らしい子が……」
つーか、背後にいたのに彼女のこと、見てなかったのかよッ!!
「可愛らしい子?
お名前は?」
質問多すぎですけど、香椎くん。
「存じません」
「存じない?」
私の答えに益々香椎くんの顔が苦くなった。