愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
その時だった。
香椎くんが何かに気付いたみたいに上を向き、私の腕を引っ張った。
「ちょっ……!!」
私は香椎くんの腕の中に包まるような形になり、そのまま芝生の上に押し倒される格好になる。
ちょちょちょちょちょちょっと!!
なになになになになに、この急展開っ!!
私が知らない子と一緒にいたってだけで、なにか火がついちゃったとでもいうの?
いやいやいやいや、にしたってダメでしょ?
あなた、私の執事じゃない!!
こんなところで昼間から、そんな……
ザシュッ!!
聞き慣れない地面に何かが突き刺さるような音と、私の目に鈍い鉛色に光るものが見えたのはそんなときだった。
香椎くんは私を素早く抱き起こすと、ベンチの後ろに佇むポプラの木の裏に身を潜めるように座りこんだ。
っていうか……さっき私が見たものはなんだったのでしょうか?
そう思ってそっと香椎くんの腕の中から、さっきいた場所を見る。
ベンチの近くの芝生の上に、なんとも不釣り合い極まりない物騒なものが突き刺さっている。
「矢?」
あんなの刺さったら大怪我じゃない!!
それどころか、あたりどころが悪かったら……想像したくないです。
「まったく……容赦ないな」
私を抱きしめたまま、周りを警戒するようにぐるりと視線を四方に巡らせながら香椎くんはそう呟いていた。