愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
それから私に向き直ると、私の鼻先に自分の鼻先をこするようにして笑う。
「課題もう一つ増やしていい?」
甘い恋人みたいなしぐさ。
そして執事らしからぬしゃべり方に……胸がドキドキとものすっごい早さで鼓動を始める。
待って。
待って。
待って。
この状況でそんな台詞言うなんて、それって詐欺って言うか、反則すぎっ!!
「怪我したくなかったら絶対にオレの傍、離れないこと」
私の目をじっと見つめてそう言う香椎くんに、私が出来ることは何一つなくて……
「これはキミを守るためだから」
強く、強く香椎くんは私をその腕の中に閉じ込めた。
執事らしからぬその態度に。
執事らしからぬその物言いに。
言いたいことも聞きたいことも山のように積もるのに、私は何一つ言うことも聞くこともできないまま、ただしばらくの間。
香椎くんの腕の中に抱かれたままでいた。
そして……昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴るまでに、あの正体不明の彼女が戻ることはなく……
私の胸にはわけのわからないモヤモヤした気持ちがまた一つ増えたという事実だけ残る形になってしまったのだった。