愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
頭の中で繰り返し、繰り返し、何度も何度も再生されるのはあの出来事。
それは生々しくも鮮明で、恐ろしいほど脳裏にこびりついていた。
忘れよう。
忘れてしまおう。
忘れてしまったほうがいい。
そう思えば思うほど、人間って不思議なもので、そこからまったく身動きが取れず、むしろ泥沼に足を取られるみたいにずぶずぶハマり込むものなのよね。
不意に私の目の前に白い視界が広がる。
驚いて顔を上げればそこにあるのは、超絶美形……と形容したほうが絶対的にしっくりくる魅惑の私専属執事様こと香椎毅臣の顔があった。
「なに?」
素っ気なく。
あくまでも素っ気なく。
顔すらみないように、ふぃっと顔を横に向けながらそう尋ねた。
香椎くんはくすっと小さく笑った後で
「ぼんやりなさっておいででしたので、ちょっと刺激を」
なんてことをほざく。
ぼんやりってさ。
あんたのせいじゃないのさ。
あんたがあんなことって……
「もしかして、この間のことを思い出していらっしゃる……とか?」
一歩下がって私のあとをついてくる香椎くんは、しれっとした口調でそんなことを言う。
「んなわけっ……」
振り向きざまに香椎くんにそう返しそうになった瞬間、またしてもあの手袋の大きな手によって口をふさがれた。