愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
「とっても光栄、恐縮です」
んなことオマエ、欠片も思ってねーだろうがっ!!
と言いたい衝動を必死に抑え込む。
というより、口をふさがれた状態では言いたいことも言えないし。
「でも、お嬢様。
ここは公道なんですよ、もう少し、仮面被ったほうがよろしいかなと」
私の耳元でそんなことをこそこそ囁く。
どれもこれもおまえのせいだと言いたい。
だいたい、この男のせいで本来の完璧な私が失われていることは事実なんだよ。
容姿端麗と人々に絶賛される私。
長いストレートの黒髪。
匂い立つような気品。
鼻筋だって通って、高さもある。
唇はいつも潤いに満ちてしっとりと濡れ、男性の生唾を誘う(らしい)。
目は母親の血を色濃く受け継ぎ、ぱっちり大き目二重。
睫毛はエクステ並にばさばさ。
長い手足、白磁のように白さ際立つ肌。
こんな容姿をして、バカだったり、運動音痴だったりしたらね。
相手の期待にそえられないでしょ?
小さい頃からの英才教育の賜物っていうのか。
才色兼備……というほんと完璧な女性として、育成された私。
その仮面を付け続けて18年。
ほとほと嫌気がさしているのも相まって、このわけのわからん執事の前ではなぜか、その完璧さが型崩れしてしまうという。