愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~

コンコンッとトイレの扉をノックする音が響き、その後今一番聞いちゃいけない人の声が飛んでくる。


「お嬢様、大丈夫ですか?
もう30分も籠られておりますが」


あー、そう。
30分も籠ってこんな悶々としてるんだ、私。

バカすぎる。


「お返事がない……開けるべきか?」


彼の呟きが聞こえ、扉の取っ手がこれ以上はないほどガッチャガッチャ激しい音を立て始める。


「ちょ……ちょーっと待って!!
大丈夫だから!! いますぐ出ますっ!!」


急いでトイレットペーパーをちぎり、海になっていたそれを隅に追いやる。

それから服の乱れを直し、水を流すと何事もなかったようにトイレを出る。


「トイレの中で倒れられているかと思いました」


倒れてしまいたかったです、いっそ。


「トイレしか息抜けないんだから、放っておいてほしいんですけど」


そういう私にけれど香椎くんはニッコリ笑顔で


「放っておけるわけがないでしょう?」


止めの一撃を投げかける。


「『大事な方』なんですから」


そういう一言は丁寧語の執事口調じゃなく、フレンドリーな口調で聞きたかったと贅沢に思う私。

でも……十分胸にずしんと来る一言だった。
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