愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~

「落ち付きましたか、お嬢様?」


ゆっくり私の口から手を離し、お得意のキラースマイルを惜しげもなく飛ばしてくる。

この男のこの仮面を、ほんとにひっぺはがしてやりたいと、ぐるぐるぐるぐる頭と心が思いを張りめぐらすんだけどね。


「どうも、ありがとう」


素っ気なく。
あくまでも素っ気なく。

完璧な私の仮面をつけたまま、優雅にやんわりほほ笑んで見せる。

対して相手の香椎くんと言えば、それはそれは満足げに極上笑顔をのせて頷いてくる。

周りを歩く人々の視線が集中砲火のように彼に注がれているのを、まるで栄養にでもして体内に取り込んでいるのか。

香椎くんのキラースマイルの輝き具合は、その度合いと勢いを増し、目を伏せ、見ないように歩く私の心の目までも浸食しかねないほどになる。


つーか……これほど存在感のある人間ってば初めてなんですけども。


小さなため息を吐きながら、一歩下がってついてくる香椎くんをちら見する。


まるで分かっているとでも言いたげな視線が返ってくる。

なんだよ。
こっち見てるなよ。
前向いてろよ。
おまえが前向いてなかったら、私に危険が及ぶかもしれないじゃないか。


「大丈夫ですよ」


見透かすように返ってくるお言葉に脱帽です。
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