愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
射抜くような。
刺すような。
それでいて熱い視線に私はまた息をするのを忘れそうになった。
ドキドキドキドキ。
ドクドクドクドク。
心臓は血液を送り出すために必要以上に動くし。
血管は送りだされた血でパンパンに膨らんでいる感じがするし。
ああ、もうダメだ。
いっそ全部吐き出して楽になりたい―!!
「罠の予感がします」
その一言に急速冷却。
真っ赤だった全身が一気に青ざめる。
なんて言った?
今なんて言った?
縄?
ちゃうちゃう、罠って言ったっけ!?
「九条のやり方は熟知してますからね。
絶対になにか企んでいるのはまず間違いないと思います」
「なにか企むって……なにを?」
「あえて言うなら『既成事実』とか」
さらり。
きっぱり。
はっきりと。
香椎くんの口から『既成事実』の言葉が飛び出した。
いや。
なんでまた『既成事実』なんてもんを作らないといけないのでしょうか?
だって名目上、婚約者になってんじゃん。
「紳士的に踏むかどうかは微妙だな」
一人、うんうんと頷いてそんな呟きを吐いちゃう香椎くんをだ。
私はただただ呆然と眺めることしかできないでいる。