愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~
呆然とその場に立ち尽くし、去っていった香椎くんの背中を見送り……視線を握ったケータイに落とした。
淡いピンク色のケータイ。
ストラップは女の子らしい、キラキラハートのガラス細工。
「直通……か」
『必要なのは私以外ないでしょうから』
確かに言われたらその通りで、反論なんか一つもできないけれど……
「直通……」
ただ一人のための、ただ一人の人との、ただ一つのケータイ。
特別感に酔わされる。
これはどっち?
男として?
それとも仕事として?
ギュッとケータイを胸に押し付けて、私は深く深呼吸した。
揺れる、揺れるストラップのように……私の心も揺れていた。
彼の一つ一つの言葉と態度に、私の心はどうしようもなく揺れていたのだった。