聖霊の宴

ミカエルは重たい口をひらく。

『私の真のギフト『裁きの天秤』は確実に人を死に追いやる力です。』

「裁きの天秤……?」

ソフィアは2人をただじっと見つめていた。

『自らと相手の善行と悪業とを天秤に掛け、罪の思い方に死の裁きを与える。これが私の真のギフトの力なのです。』

大天使が持っていたのは、殺さずの誓いをたてるシルクには相応しくない力だった。

「……何故、そのことを黙ってたの?」

シルクの瞳には微塵の怒りも恨みも見えなかった。

そこにあるのはただ純粋な疑問。

『死の力などあなたは知る必要がないと思いました。あなたの重荷になるのでは、と。』

ミカエルの低い声。

シルクはふんと鼻で息を吐く。

「ミカエルは何でも難しく考えすぎだよ。死の力だって言ってくれてたら良いのに。もちろん使う気はないけどさ。」

真っすぐな言葉にミカエルは深く後悔をした。

自らが信じると決めた少年への、裏切りとも言える不信心に。






< 115 / 406 >

この作品をシェア

pagetop