聖霊の宴
ミカエルは重たい口をひらく。
『私の真のギフト『裁きの天秤』は確実に人を死に追いやる力です。』
「裁きの天秤……?」
ソフィアは2人をただじっと見つめていた。
『自らと相手の善行と悪業とを天秤に掛け、罪の思い方に死の裁きを与える。これが私の真のギフトの力なのです。』
大天使が持っていたのは、殺さずの誓いをたてるシルクには相応しくない力だった。
「……何故、そのことを黙ってたの?」
シルクの瞳には微塵の怒りも恨みも見えなかった。
そこにあるのはただ純粋な疑問。
『死の力などあなたは知る必要がないと思いました。あなたの重荷になるのでは、と。』
ミカエルの低い声。
シルクはふんと鼻で息を吐く。
「ミカエルは何でも難しく考えすぎだよ。死の力だって言ってくれてたら良いのに。もちろん使う気はないけどさ。」
真っすぐな言葉にミカエルは深く後悔をした。
自らが信じると決めた少年への、裏切りとも言える不信心に。