聖霊の宴
リンカ村では、それまでの吹雪が嘘だったかの様に静かだった。

まるで台風の目の中にいるような感覚だ。

「妙に静かね……まさかもう。」

グレイシアはバイクから降り、辺りを見渡した。

人の気配は感じられない。

ゆっくりと雪を踏みしめ、グレイシアが村へと入る。

「……ウォーリーはここで待っていなさい。私1人で行くわ。」

「かしこまりました。くれぐれもお気をつけて。」

ウォーリーは深々と頭を下げながらグレイシアを見送る。


「……はっ。誰かいる。」

グレイシアは家の影に人影を見た。

ゆっくりとそれに近付いていく。

と……

「……きゃあ。お助け、お助けください。」

小さな赤子を抱えながら震える女性。

グレイシアはそっと手を差し伸べる。

「大丈夫よ。私はあなた達を助けに来たのよ。」

震える身体を制して、女性はグレイシアを見た。

その顔が安堵で明るくなる。

「グレイシア様。良かった、良かった……」

「うん、大丈夫。野党は何処に行ったの?」

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