聖霊の宴

真っ暗な闇に飲み込まれたシルク。

瞳を開けるが光はなくただ闇。

耳をすますが音はなくただ闇。

口を開けども空気はなく全身から力が抜けていく。




ぼーっとしだした頭。

黒の世界が次第に白に変わっていく。

脳に酸素が届かなくなったのだろう。

「……ク。」

その時、頭の奥で何かが聞こえた様な気がした。

「……シルク!」

気のせいではない、しかし姿は無い。

「シルク……いってらっしゃい。」

「この声は……リコ?」

「"さようなら"は言わないで。帰ってきて欲しいから"ただいま"を聞きたいから、今は"いってきます"と言って欲しいの。」

旅立つ際にリコがかけてくれた言葉をシルクは思い出していた。

その日は太陽が熱く眩しかったことも。

「リコ、いってきます。」







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