聖霊の宴

トクン。トクン。と心臓が脈を打つ。

血が全身を忙しなく駆け抜けていく。

「……ルク。」

また聞こえてきた声に耳をすませる。

「シルク・スカーレット。あなたならばこの国を平和で豊かな国に導いてくれると信じているわ。」

「……マリアさん。」

シムとの戦いで負傷したマリア。

炎王の城で用意してもらった部屋、そこをシルクが出ていく時にマリアはそう笑って言った。

偽りなどではないと瞳を見れば分かった。








帰りを待つ者がいる。



自分を、未来を信じ託してくれた者がいる。



負けてはならぬ理由がある。




そのことに気付いた時、シルクの中から枯渇したはずの魔力が湧きだしたのだった。





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