聖霊の宴


ステッキを振るうと闇が容易く切り裂かれる。

まるで紙の様に捲れあがり、現実世界が目の前に広がった。

「――なんだと!?そんなフザけた杖でオレ様の幻術を破ったって言うのか?」

ソフィアは目を見開いていた。

クラフィティの手に握られていたのは、先に猫の手の形のオブジェが付いた、なんともコミカルな杖だった。

ソフィアの眉間に血管が浮き出る。

「本当にふざけた爺さんだ。オレの手で直接殺してやるしかねぇみたいだな。」

ソフィアが鎌をかまえる。

クラフィティは杖をくるくると回してかまえた。

「ルシフェル『黒蝶=コクチョウ=』」

ヒラリと羽を広げる闇色の蝶が鎌から産み出されていく。

それは蝶の動きとは到底思えない奇妙な軌道を描きながらクラフィティへと向かっていった。

「遠距離攻撃に目隠しも兼ねているのか。やっかいな技だ……ケットシー『バブル・ショット=泡撃=』」

猫の手の肉球の部分から虹色のシャボン玉が飛んでいき、黒い蝶を打ち落としていく。

「へい、がら空きだぜ。」

クラフィティの背後へと回り込んでいたソフィア。

斜め下から鎌を振り上げる。

「ケットシー『ワンダー・ランド=不思議の国への招待=』」

肉球から飛び出すとびきり大きなシャボン玉がソフィアを包んだ。

「なめんな!」

シャボン玉を気にもとめずに鎌を振り抜いたソフィア。

シャボン玉は簡単に割れてしまった。


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