聖霊の宴
七十六年前――
穏やかな晩秋の大陸で大規模な内乱が勃発した。
「クラフィティ王。西の騎士団からの連絡が途絶えました」
王宮の最奥でクラフィティは頭を抱えていた。
そこへやってきたのは執事のアルバスであった。
アルバスは部屋に入るなりに跪く。
「ヘルニスめ……本当にこの大陸を乗っ取るつもりか?」
ランバール・ヘルニス。
クラフィティが設立した騎士団の初代騎士長を務めていた、気高き男であった。
ブレのない信念、貫き通される意志、そして冷酷なまでの強さを持っていた。
「ヘルニス様……いや、ヘルニスに従う軍勢はおおよそ二千。しかしいずれも一騎当千の猛者ぞろい。ここは……王自ら戦場におもむかれるのが宜しいかと」
「クラフィティ伯爵!」
急に扉が開かれる。
そこに入ってきたのは赤い髪を持つ、力強い瞳の青年だった。
「ルーク・スカーレット……何故貴様がここにいる!」
アルバスの声を視線で流して、ルークはクラフィティの側へ歩み寄る。
「貴方は戦場へ行くべきではない。ヘルニスの始末は私がします」
「ルーク……」