聖霊の宴

――嘆きの丘。


植物は鬱蒼と生えるのに、何故か葉をつけない特殊な大地に覆われた丘である。

「来たか、ルーク・スカーレット」

その中腹にヘルニスはいた。

「ヘルニス貴様、シルクを何処へやった!」

放たれる怒気を、ヘルニスは鼻で笑い飛ばす。

「ふっ、たかだかガキ1人に何を熱くなっている?ガキならそこにいるだろう?」

ヘルニスがルークの後ろを指差した。

振り返るルークの目に写ったのは、枯れた木に眠らされたまま吊されるシルクの姿だった。

「シルク、シルクー!」

取り乱したルークがシルクの元へ駆け寄ろうと身を翻した時。

「――がっ」

ヘルニスは無防備なルークの背中を躊躇なく切り裂いた。

ふらつくルークに更に無情な刃が迫る。

「貴様のせいで私の計画は狂った。息子もろとも死して償え、ルーク・スカーレット」

背を裂かれ、腕を斬られ、四肢を傷つけられてもルークは立っていた。

一歩たりともシルクには近づかせまいとただ立ちすくむ。

「心折れぬか……ならば足を切断してやろう。そうしてゆっくりとガキを殺すとしよう」

「き、貴様ぁぁあっ!」

無情にも切り取られる両足。

「ふん…………むっ?」

ヘルニスがルークの横を通り過ぎようとすると、足を何かに掴まれた。


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