聖霊の宴

「そしてその戦いの中でシルク・スカーレットは命を落とした」

クラフィティはシルクハットを取る。

「君の先祖には私の命を幾つも救ってもらった。感謝している」

「クラフィティ伯爵……」

「君の祖父であるシルクを失ってから、父ハルクと君を私は陰ながら見守ってきた」

その時、頂上で大爆発が起こる音がしてクラフィティが振り返った。

「どうやら私もここまでらしい。直にこの幻影も消えるだろう」

「幻影?じゃあクラフィティ伯爵はまだソフィアと?」

クラフィティは真っ直ぐにミカエルを見つめる。

「ミカエルよ。お前ほどの精霊ならば『鍵』は持っているだろう。シルクを殺されたくなければ開くのだ……『ヘブンズ・ドア=天界の扉=』を」

二度目の爆発でクラフィティの姿が弱々しく波打った。

「ここまでだな。シルク・スカーレット、君は王となり何を成す?」


「……誰も傷つかなくて済む暖かな世界を僕は作ります」

真っ直ぐな瞳。

クラフィティは笑った。

「さらばだシルク・スカーレット。君の覚悟上から見届けよう」

そしてクラフィティの幻影は消え、頂上はおぞましい程の魔力で包まれた。

『シルク、行きましょう。クラフィティの死を無駄にしてはいけない』

「うん……わかってる」



オルター・クラフィティ死亡。

このことによりソフィアが晩秋の大陸の新王となった。

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