聖霊の宴

フレアはシルクの警戒心が自らと相対するに足ることを見てとると、ゆっくりと右手を上げる。

そしてシルクに向かい手を伸ばした。

「――『鏡火=キョウカ=』」

感じたのは左手の違和感。

次いで何かが焼ける「バチッ」という音を鼓膜が脳へと伝えたのとほぼ同時に、左手が激痛に包まれた。

「ぐっ、ぐぁぁぁぁあっ!!」

シルクは左手を右手でさする。

そこに水分は感じられなかった。

ミイラの様にパリパリに乾ききった腕を見て、再びシルクは悲鳴をあげる。

「うわぁぁぁあっ!!腕、腕が枯れて」

取り乱しフレアへの警戒心が無くなるシルク。

フレアは低く威厳ある声で一言。

「シルク・スカーレット」


名前を呼ぶだけでシルクの乱れた心を制し、警戒心をも取り戻させる。

シルクはゆっくりとフレアの瞳を見つめる。

彼は黙して言う「私に全てを見せろ」と。




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