聖霊の宴
灰炎の手前にある山の頂上にシルクは立っていた。
陽も傾きだしたが、あとは真っすぐに山を下るだけ。
山頂から今来た道を振り返ると、この数か月の壮絶な日々が走馬灯の様に蘇るのだった。
「フレア王はいなくなってしまったし、マリアさんは未だ眠ったまま。
クラフィティ伯爵は死んでしまって……」
シルクはぐっと拳を握り締める。
その視線の先にはいるはずのないソフィアの姿が写っているのかもしれない。
『シルク、さぁ帰りましょう』
ミカエルがそっと、握り締められたシルクの拳に触れる。
シルクは少し眉をひそめながら笑って、また歩きだした。
その時だった。
「――――なっ!?」
『何ですかこの得体の知れない、おぞましいばかりの狂気は!?』
急に重力が強くなったかの様に全身にのしかかった狂気。
心臓が慌てて脈をうち、冷や汗が全身から流れ出る。
それは一瞬にして治まったが、今までの何とも比べようのない恐怖をシルクは感じたのだった。
「何だったんだ……今の」
しばらく辺りに気配を感じないか探ってみたのだが、何もない。