聖霊の宴
夕暮れの街並みから出る白い煙。
それはほのかな風とともに夕食の香ばしい香りを届けるのだった。
「ただいま」
灰炎と崩した文字で書かれた看板を過ぎて小さくシルクがそう言った。
家の横にはそれぞれの畑があり、それぞれが責任を持って管理している。
「シルク!シルクじゃあないか」
瑞々しいとうもろこし畑を横切ると草影から声がして、シルクは立ち止まる。
「こんばんはリンダさん。今年のとうもろこしもまた一段と瑞々しくて美味しそうですね」
シルクが笑うがリンダの顔は晴れない。
「どこも怪我はしてないのかい?辛いこととか無かったかい?
サモンさんからあんたが宴に呼ばれたと知らされた時に、私はどれほど心配したことか」
リンダは畑から出て、シルクにゆっくりと歩み寄る。
「辛いことがなかったわけではないですが、身体は無事ですよ。心配かけました」
シルクはそう言ってリンダの手を取る。
「あんたが無事なら良いんだよ。さ、早くサモンさんのところに行っておやり。
リコも……いや、私が言うことじゃないね。さ、サモンが一番あんたの心配をしていたんだ、顔を見せて安心させておやりね」
「はい。では」
手を振って歩いていくシルクを、リンダは辛そうな表情で見送っていた。