聖霊の宴
サモンの家は村の奥にある。
シルクがゆっくりと歩いていく。
夕飯の煙がそれぞれの家から立ち上る。
しかしサモンの家にだけは煙がなかった。
「あれ?おかしいな。いつもだったらこのくらいの時間には夕飯を食べているはずなのに」
そう疑問に感じてシルクは僅かながら歩調を早める。
そして玄関に手をかけた瞬間だった。
「――なっ!?」
再び感じるおぞましいばかりの狂気。
シルクは震えそうになる手で玄関の扉を開いた。
「ぐっ……中でいったいなにが起きているっていうんだ?
サモンさん……リコ……」
扉を開くと中から狂気が溢れだした。
身を圧迫されるほどのそれにあらがい、シルクは中に入っていく。
茶の間にもサモンはいない。
台所も何もない。
サモンの部屋も布団が一式敷いてあるだけ。
「奥……リコの部屋か?」
シルクはサモンの部屋の襖(ふすま)を締め、一番奥のリコの部屋へと向かう。
陽は落ち、民家の灯りだけが辺りにこぼれる。
「リコ……サモンさん……無事でいてくれ」
開かれた扉の向こうの光景にシルクは言葉を失うのだった。