聖霊の宴
辺鄙のアルケミスト
しばらくしてサモンが戻ってくる。
その手には木片と鉄塊が握られていた。
「……それは?」
シルクがそれらを指差し尋ねる。
サモンはゆっくりと元いた席に腰掛ける。
「これが何に見える?」
唐突な問いであるが、どう見ても見たままの木片と鉄塊である。
シルクは見たままを答える。
「汚れた木片と、ボロボロな鉄塊……ですよね?」
「ふむ。君にはこれが汚れた木片とボロボロな鉄塊にしか見えんのか。」
シルクは首をかしげる。
「ではサモンさんには何に見えているのですか?」
サモンは2つを重ね合わせて言う。
「これは鉋だよ。ほら触ってごらん。」
サモンに言われるがままにシルクは2つに触れる。
しかし、もちろんそれは鉋などではなく、ただの木片と鉄塊である。
「まだ分からないかね?ならば、ゆっくりと目を閉じて鉋を想像してごらん。」
ゆっくりと目蓋を閉じたシルク。
手に集中すると、周りがやけに静かになっていくのを感じた。
「鉋の手触り、重さ、匂い、形すべてをゆっくりとイメージして。」