聖霊の宴

辺鄙のアルケミスト


しばらくしてサモンが戻ってくる。

その手には木片と鉄塊が握られていた。

「……それは?」

シルクがそれらを指差し尋ねる。

サモンはゆっくりと元いた席に腰掛ける。

「これが何に見える?」

唐突な問いであるが、どう見ても見たままの木片と鉄塊である。

シルクは見たままを答える。

「汚れた木片と、ボロボロな鉄塊……ですよね?」

「ふむ。君にはこれが汚れた木片とボロボロな鉄塊にしか見えんのか。」

シルクは首をかしげる。

「ではサモンさんには何に見えているのですか?」

サモンは2つを重ね合わせて言う。

「これは鉋だよ。ほら触ってごらん。」

サモンに言われるがままにシルクは2つに触れる。

しかし、もちろんそれは鉋などではなく、ただの木片と鉄塊である。

「まだ分からないかね?ならば、ゆっくりと目を閉じて鉋を想像してごらん。」

ゆっくりと目蓋を閉じたシルク。

手に集中すると、周りがやけに静かになっていくのを感じた。

「鉋の手触り、重さ、匂い、形すべてをゆっくりとイメージして。」


< 22 / 406 >

この作品をシェア

pagetop