聖霊の宴
客間に移動したシルクとワイズ。
簡単な家屋くらい入ってしまいそうな程に広い客間。
その中央にはガラス製のテーブルとアガシアの木を削って造られた椅子が向かい合わせに置かれている。
大きな窓からは城下が一望でき、ワイズは満足げに口笛を一息ついた。
「お茶をお持ちしました」
マリアがノックをしてから客間にやってくる。
その手には2人分のティーセットがあった。
「良い香りだ。アルグレイと僅かなオレンジペコがブレンドされている様だね」
ティーカップを手にとって香りを確かめたワイズがそう言った。
マリアは驚いた様に目を見開く。
「ふふ、どうやら当たりの様だね。君のオリジナルのブレンドかな?なかなかセンスがあるね」
「あ、ありがとうございます。
それでは私は失礼いたします」
マリアは深々と頭を下げて客間を後にした。
「お茶も嗜(たしな)まれているんですね」
シルクはゆっくりと香りをかいだが、全く茶葉の種類など分からず眉をひそめた。
「100余年も王をしていると、なかなかどうして時間を持て余すことがあってね。
気ままに大陸を巡っては色々な地の様々な特産物を見たりしてね、いつの間にか詳しくなっていたのさ」
ワイズは笑って紅茶を一口すすり、「うん」と言って穏やかに頷いた。