聖霊の宴
「クイーン・ピクシーだと?ばかな」
気付いたときにはもうゲインの回りはこの地に咲くはずのない青い花畑になっていた。
「そんな馬鹿な幻術は早い者勝ちなはず!私は私に幻術をかけていたのに!!」
ゲインは頭を抱えてのたうち回る。
「やっぱりね。どうりで可笑しいと思ってたんだよ」
青い花畑の中からリンクがふと現れてはまた消えていく。
「僕程度、いや僕以下の魔力しか持たないあんたが僕の幻術をはね除けられたわけ。あんたは自らに幻術をかけることで魔力を強制的に増大させ、僕の幻術が上書きできないようにしていた」
花畑の中から不敵に現れ、見下すような目で見つめるリンク。
ゲインは少しずつその顔が残像で残る感覚を味わっていた。
「しかし、本来の僕の精霊はクイーン・ピクシー。その辺の悪魔の幻術の比ではない魔力を持つ精霊だ。オッサンの薄っぺらな幻術なんて掻き消して今のこの状態ってわけ。ねぇ、オッサン。そろそろお家へ帰ったらどう?」
リンクの魔力が研ぎ澄まされ、青い花畑は一瞬にして身の毛ももよだつようなおぞましい沼地に変わった。
「クイーンは種を統べる者だからね。種の謀反者を裁くだけの力を持っている。あんたが自分に幻術をかけて思い込みで力を増幅したように。つよい思い込みは現実をねじ曲げる」
沼地に引っ張りこまれ暴れるゲインであったが、動けば動くほどに身体の自由が奪われていく。
「幻術での死は当然に現実世界での死をも意味している。さよならオッサン、お互いまた会いたくはないよね」
リンクはひらひらと手をふる。
手向けの青い花が一片飛んだ。