聖霊の宴
グレイシアはマリアと同じく遠距離、中距離からの魔術を操るタイプだった。
そのスピードはマリアのそれとは比べ物にならないほど速く鋭い。
「凍てつきなさい『アイス・ストーム』」
極寒の風が吹きすさみ辺りにある在りとあらゆる物を氷付けにする。
「これだけの広範囲の物を氷らせるなんて、なんて厄介な術なの?」
マリアは己を水流の中に取り込みグレイシアの産み出した凍てつく気流を遮断する。
シルクは至ってシンプルに大天使の羽衣で自身を覆うことによって身を守っていた。
マリアの水での攻撃はグレイシアの氷結との相性が悪く、術を発動すればするほどに、グレイシアが自由に氷を使えるようになってしまう。
唯一の水流での攻撃は氷を切り裂くことが出来るが、マリアの魔力の消が激しく使うことは難しい。
本来ならば二対一の利点は一人を陽動に勝機を見いだすことにあるのだが、今のマリアの力では陽動にすらならないほどにグレイシアとの力が隔絶されたものとなっていたのだ。
更に負の連鎖を起こす要因はシルクの心にある。
『シルク……』
マリアは厳しい表情でシルクを見る。
その意図がシルクにはよく分かっていた。
そしてそれを実行できないシルクの心をミカエルは痛いほどに分かってしまうのだった。
その小さな動揺を見逃すほど元大陸王は甘くない。