聖霊の宴

「どう?これが私の力よ!

この極寒の冷徹な世界で生きるために身に付けた唯一無二の強大な魔力。そして私の精霊シヴァの神力とが合わさったこの力!!あんたの説教なんて欠片も残さずに消してあげるわ!!

あははははははは!!!」

グレイシアは両手を広げ高らかに謳う。

魔界の吹雪は辺り一面を、不自然な程美しい白銀の塵に変えていく。

「本当に馬鹿な女ね。この私に楯突くから悪いのよ。

あんたみたいな弱いやつがこの私に、かなうはずがないのに!!」

グレイシアは腹を抱えて笑う。

「はははははーーーーはは、えっ?」

しかしその笑い声は一瞬にして消える。

魔界の吹雪が掻き消され、その中心部にいたマリアは無傷で立っていた。

「残念ねグレイシア。私のオーパーツはあなたのギフトを上回る」

「そんなーーそんなはずがない。

私の魔力とあなたの魔力では雲泥の差が」

マリアはバミューダの杖をグレイシアに向ける。

「魔力の大小だけが闘いの結果を決めるなんて、弱肉強食の世界ではそんな風に教わるのかしら?」

マリアはこの時、精一杯の虚勢でもってグレイシアを挑発していた。

マリアには最初からこの闘いの結果が分かっていたからだ。

「私に傷ひとつ付けられないあなたじゃ王の座から陥落したのも納得な話ね」

「……あんたね」

グレイシアは憤怒の表情でマリアを睨み付ける。

その放たれる魔力はマリアの虚勢すら吹き飛ばして、マリアの心をへし折るのに足りるだけのものであった。

「なに?なにか言いたいことでもあるのかしら?


しかし、マリアの心は折れない。

100%負けると分かっていた戦。

だからこそマリアは自分にしかできない形でこの闘いに勝利をもたらそうとしていた。




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