聖霊の宴

「本当に生意気な小娘だこと。

よく分かったわ。あなたは私のオーパーツでこの世界から消し去ってあげる」

雪原が広く抉れるほどの魔力。

マリアは狼に睨まれた被食者の様な感覚の中で、グレイシアがシヴァを招来するのを見た。

『久方ぶりのお呼びだなグレイシア嬢』

「無駄話なら要らないの。さっさとあの小娘を殺す」

『よかろう。我が破壊の力存分に使うが良い』

シヴァは圧倒的な光を放ちグレイシアの元にその光が収束した。

その手に握られたのはクリスタルの様に輝く勾玉が7つついた首飾りだった。

「オーパーツ『破壊神の七夢=ハカイシンノシチユメ=』」

無気味な程の静寂に包まれる。

圧倒的な魔力。しかし穏やかすぎて警戒心が薄れそうになる。

マリアは一欠片の隙すらも存在しないほどに集中力を研ぎ澄ます。

マリアのバミューダの杖は完全防御型のオーパーツだった。

その結界領域に足を踏み入れた物体、魔力その全てを飲み込み消滅させる。

マリアの小さな魔力では、結界領域を自分の周囲(正確にはバミューダの杖)からわずか40センチほどしか展開することができなかった。

しかしその周囲40センチの中の地中、空中全てがマリアの結界領域となっているために、魔力を著しく消耗するオーパーツを維持できる間は絶対的な防御となりマリアを守ることができた。

もし、マリアの魔力が遥か高みのものであったならその結界領域を広げ攻撃にその力を生かすことができたかもしれないが、これがマリアの持ちうる才能の限界であった。

「なに?大層な事を言っておいて何も変わらないじゃない」

だからこそマリアは最初からこのグレイシアとの一対一を望み、もしそうなった場合には自らの全魔力と命をかけてグレイシアの魔力を少しでも多く削ることを考えていた。

その最大の望みはオーパーツを使わせること。

それが実現すると言うことは、もうひとつの可能性が確実なものとなることを差していた。

「グレイシアのオーパーツ。恐らく私の不完全なオーパーツでは防ぐことはできない。

これから先、グレイシアの魔力を確実に削れるけれど、その代わりに私は








ーーー確実に死ぬ」



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