聖霊の宴
天空より曇天を裂く無数の光が降り注ぐ頃、シルクはまだマリアとグレイシアの居場所を見つけられずにいた。
「くそ、マリアさん。マリアさん!!」
闇雲に駆け回ると極寒の気候と、走りにくいサラサラの雪原が体力を奪う。
『今のシルクには言葉は届かない。それほどに自らの戦況判断の誤りに憤怒してしまっている。
それが最もこの場にそぐわず、このせんきょうを打破するのに不必要な感情と知りながら』
ミカエルはただ黙していた。
シルクを信じるが故にただ。
「僕は僕はなんて無力なんだ。こんな弱いやつが大陸王だなんて」
シルクの足が立ち止まる。
シルクは自分の靴の上を滑る粉雪を数回見送った。
その時だった。
「あーあ。やっぱりこうなったか。」
何処からともなく声が聞こえてきた。
それは呆れた様で、我が子を心配するかの様に優しく、誰よりもシルクを信頼している。そんな口調だった。
「顔を上げよ大陸王。
お前は俺様の後を次ぐことを許された孤高の存在。俯くことは許されない。」
立夏の腕輪から炎が立ち上ぼり、それがかの極寒の地に似合わない蜃気楼を生み出す。
「あなたはーーフレア」
そこに現れたのは元立夏の大陸王フレアの姿であった。
「シルク。お前の闘士が揺るぎし時、我が幻影が現れるよう腕輪に細工をしていた。
お前が我が幻影を見ていると言うことはお前の中の闘士が揺らいでいる証拠なのだ。
まずは聞こう。お前は何故その闘士を失った」
凛として揺るがない不屈の意思。
恐ろしいまでの覚悟とも言えるものがフレアからは感じられる。
それは凡人に畏怖を抱かせ、それと同時にそれを凌駕するほどの憧れの念を抱かせるのだった。
「僕は……僕は自分の」
「自らの無力さを呪う。か?」
シルクは目をそらす様に下を向いた。
「解せぬな。まっこと理解に苦しむ」