聖霊の宴

フレアは続ける。

「自らの無力を呪うのなら何故お前は立ち止まる。そこに未来はなくお前自信を救いだすこともない。

自らの無力を呪うのなら、牙を研ぎ澄ませ。無力な自身を食いちぎり、引き裂き、目の前に立ちはだかる敵を撃破せよ。

それこそ唯一無二の救いと心得る」

フレアはそう高らかに言い。

ゆっくりとシルクの頭を掴む。

「が、それは俺様の持論であって、大陸王の努めでもなければ、無論シルク、お前の努めではない。

お前にはお前にしか選べない救いの道がある。
それが一見お前自身を恐ろしく傷つけ、自己犠牲の先に見えてくるものだとしてもな。」

温かな手が離れる。

そして蜃気楼が力なく揺らぐ。

「考え頭を抱えよ、されど決して俯くな。民を守る為の盾となれ、されど決して折れてはならぬ。

民の安寧を全てとし、されど決して自らを犠牲にするな。

王とは民の為にある。しかし王も民の1人だということは決して忘れるな。

今一度問おう。お前が今何を成すべきか」

シルクは頭の中でフレアの言葉を復唱した。

そしてゆっくりとフレアを見つめる。

フレアは彼らしい豪快な笑みを浮かべて「くかか」と笑って消えていった。

『シルク』

「ああ、いこうミカエル」

研ぎ澄まされた魔力が純白の翼を生み出す。

シルクはおぞましい魔力が放たれる場所へと飛んだ。



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