聖霊の宴
爆風で巻き上げられた雪がゆっくりとゆっくりと地面に堕ちる。
光の雫は最大の面積を誇る厳冬の大陸の1パーセントの大地を焼き尽くしたのだった。
それだけの爆発の中グレイシアは自らを分厚い氷の壁で包み込むことで無傷でいた。
「それにしても、まさかこの私が大陸王でもない小娘にオーパーツまで使わされることになるなんて誤算だったわ。
勾玉はあと3つあるけれど発動は一日に2回が限度。仕方がないわね」
グレイシアはオーパーツを納める。
そして一息ついた時だった。
天使の装束で傷ついた女性を抱える人の姿をグレイシアは遠くに捉えた。
「まさか間に合うとはね。全くこの私のオーパーツで小娘一人始末できないなんて大誤算も良いとこよシルク・スカーレット!!」
グレイシアの怒号が響く。
シルクはゆっくりとマリアを地面に置く。
「シルク・・・」
マリアは傷ついた腕を必死に伸ばした。
シルクはその震える手を一度ギュっと握り優しく微笑む。
「行ってきますマリアさん」
「いってらっしゃいシルク。勝って」
シルクは頷くと一瞬にして消えた。
マリアは気づいていた。
シルクの瞳から迷いが恐怖が消え去っていたことに。
その瞳に誰よりも強い覚悟を宿そうとしていることに。
マリアは額の前で手を組み祈りを捧げる。
「神様。私はあの少年にこの世界の命運を託したい。私の夢を力を希望を彼に」