聖霊の宴

「『光撃』!!」

光の筋が吹雪を切り裂く。

グレイシアは身を翻しそれを難なく回避する。

空中で身をよじらせ、勢いよく手を振る。

「甘いわね『アイシクル・バレッド』!!」

氷の弾丸は回避したシルクの右肩をわずかにかすめる。

するとアイシクル・バレッドに触れた部分が瞬間的に氷結した。

シルクは咄嗟に大天使の羽衣を巻き付け、光熱によってひかないようにねした部分を融かした。

「正義のヒーロー気取りで戻ってきた割にこの程度?

あなたは未熟過ぎて大陸王には足らない。それも到底ね!」

グレイシアが氷原に触れると降り積もった雪が舞い上がりグレイシアの姿を隠した。

シルクは自分の回りにも覆い尽くしていく雪の煙幕の中、神経を研ぎ澄ます。

風の切る音を、雪埃の微妙な変化を、自分の勘を。

真正面の下。

うねり上げるように迫ってくる氷柱をなんとか首を横にして回避する。

「ーーくっ、そ!!」

その眼前に迫っていたのは触れたものを容赦なく氷付けにする氷の糸。

「ぐっ『光幕』」

光の幕がシルクと外界とを隔てる。

光の幕に触れた瞬間に氷の糸は昇華し霧散した。

「はぁ、はぁ、はぁ」

感覚を研ぎ澄ますことが普段の三倍、いやそれ以上にシルクの魔力の消耗を速くしていた。

シルクは視界の端になんとかグレイシアを捉える。

「うぉぉぉおっ『光撃蓮華』!!」

無数の光が放たれ、グレイシア目掛けて突き抜けていく。

「遅い遅い。光の攻撃も大したことないわね」

光を回避するグレイシア。

その時初めてグレイシアは気づくのだった。

無数の光の中の一筋が初めてグレイシアの衣服をかすめる。

「な、避けきれなかった!この私が!?」
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