聖霊の宴
グレイシアは血の滴る自らの手を見つめ不気味に笑った。

そして音もなく飛び出しシルクの頭上から拳を落とす。

寸手のところで回避したシルク。

突き刺さった拳の衝撃で雪が数メートルも吹き上がった。

「なんて拳の威力だ。

人が生み出すことができる力を超えている」

尚も間髪いれずに襲い来るグレイシア。

驚異的に上昇した身体能力を駆使し、どんどんシルクを追い詰めていく。

「死ね」

容赦ない渾身の右ストレートがシルクの顔面を破壊しようとする。

シルクは身体を後方に倒し更に首を折る。と同時に地面から光の幕を伸ばした。

グレイシアの拳は光の幕を突き破りシルクの鼻先に触れた所で止まった。

わずかにかすめただけであったがシルクのは穴からは出血が見られる。

「――――――――――えっ!!」

眼前で静止したグレイシアの拳を見てシルクは驚愕した。

「拳が粉々に折れている!?」

グレイシアの拳が不規則に曲がり赤く腫れ上がり、所々で出血している。

普通ならば痛みで拳を握るどころではないはずだ。

「まるで痛みを感じていないかのような・・・

まさか!グレイシア君は!?」

シルクはグレイシアの身体能力が飛躍的に上昇する直前の彼女の行動を思い出していた。

そのことから、ある答えを導く。

「その表情を見ると分かったようね。その通りよ。

私のギフト『アイス・ドール』は極細の氷の糸で人を操り、それと同時に超零度で人体のあらゆる痛覚を壊死させる。

人は自らの身体を護るために無意識下で力を制御している。それを誘発する最たるものが痛みよ。

私の『アイス・ドール』に魅入られた者は身体の自由を奪われ痛覚を破壊される。私の命令に忠実に従い、痛みを感じない不屈の戦士を生み出す、これが私のギフトの真の力」


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