聖霊の宴
変化は唐突に認識した。
強大な魔術の前に手も足も出ない二人の刺客。
矮小な魔力の水の使い手と大陸王に足らない光使い。
私の敗北など到底想像もつかない程に隔絶された力の差があった。
――――――――――――はずだった。
「『ロッド・オブ・バミューダ』!!」
水の使い手は戦いの中でオーパーツを駆使しこの私に破壊神の七夢までをも使わせた。
「きみだって本当は戦いを望んでなんかいないんじゃないか?」
小便臭い弁舌を繰り返す小僧が戦いの中で進化を繰り返し一刻が過ぎる毎に私の影を捕らえ、遂には私を光りの衣で捕縛に成功した。
理解が追いつくはずもない。
この状況を果たして誰が予想できただろうか。
私の思考は今、悉く停止している。
しかしなんだ?この湧き上がる物は?
激情にも似た、憤怒とはまた違う・・・
そうだ、これは――――――――――
永らく忘れていたこの感情は正しく悔根。
私はただ私自身のこの持て余す自尊心を護るためにここで負けるわけにはいかないのだ!!
ピリッ。
微かな布切れの音でシルクは異変に気づいた。
「はあああああっ」
一時は尽きたかの様に見えたグレイシアの魔力が再び湧き上がる。
それは今までよりも強く激しく、強くなったシルクの大天使の羽衣をも容易く破り去ろうとしていた。
「私はまだ負けてなどいない!負けてなるものか!!!」
戦いの化身。
勝利に取り憑かれた亡霊のようにグレイシアはシルクに敵意を向ける。
その姿はまるで雪原に生きる狼の様に荒々しいものだった。