聖霊の宴
「……くっ」
一刻が過ぎる毎にその差は確かに開いていた。
『ワイズ、このままだと……』
少しずつだが確実にワイズが負う傷の方が多く、そして深くなっている。
その様子に勿論サスケが気づかないわけがない。
「どうやら、無理を強いていたようだな?」
サスケは一度距離をとり、カタナヲ鞘に納めた。
「……無理?なんのことだい?
と、言いたいところだがもう誤魔化せない様だね」
ワイズが神経系に注いでいた魔力を止めると、頭が割れるように痛みだした。
その痛みでワイズは苦痛に顔を歪めた。
ここで初めてオーディンが口を開く。
『所詮人間ごときが神の真似をしただけのこと。
我らのように湧き出る魔力のない貴様ら人間には、猿真似だけでも神経系をズタズタに引き裂く副作用を抑えることなど叶わぬ』
オーディンはワイズを見下す様に見ていた。
その様子にシルフィードは気付きオーディンを睨み付ける。
『何じゃ?言うてみろ。最も風の精ごときがこのワシに宣う言葉があればの話じゃが』
怒りに飛び出しそうになったシルフィードをワイズが手で静止した。
ワイズはシタタル汗を拭くことすらできずにシルフィードに笑いかけた。
「僕を愚かと言うのなら受け入れよう。所詮は人間ごときの蛮勇やもしれん。
しかし、この僕とこの場所まで闘い続けてくれた彼女を悪く言うことは許さない」
『ワイズ……』
オーディンは鼻で笑う。
『愚かしいな小僧。
そんなだから貴様はサスケの真の力にも気付かない』
「なん……だと?」
『失念したか?ワシはあやつにワシの魔術はくれてやらなんだ。
しかし、その法を得る方法を知っているものが、それに耐えうる魔力を宿す者に出会ったらどうなる?』
オーディンの言葉にサスケが隠していた魔力を解き放つ。
「そんな、ばかな」
その威圧感たるや本人のそれとは比べ物にならないが、オーディンの様に圧倒的でまがまがしいものであった。
「拙者はこの両の目を我が愛刀『霞
我鮫"カスミガサメ"』に貫かれることで一つの法を得た。
我が唯一の法で貴様に引導を渡してやろう」
爆発的な魔力が霞我鮫に集まっていく。
湯気のように白い気体が発生し徐々に霞我鮫の刀身を覆っていく。
「ギフト『霞咲"カスミザキ"』」