聖霊の宴

それは一瞬の出来事だった。

サスケがその圧倒的な魔力を込めた槍を構えた瞬間。

シルクは魔力を僅かでも祓う為に光を放った。

光に触れた槍から祓われた魔力は本当に微々たるもので、その特異とも言える能力に支障をきたすものではないとすぐに分かった。

「さあ終わりだシルク・スカーレット!!!」

サスケの叫びと同時に翡翠の翼を広げたワイズが飛び立つ。

羽ばたきは空を駆けて一目散にある場所を目指す。

サスケが投擲の構えにはいるとグングニールが耀き、圧倒的な魔力を所構わず辺りに撒き散らしていく。

それはグングニールが蓄える魔力からしたら取るに足らない微々たる魔力であったが、触れた畳を床ごと塵にするほど鋭い物であった。

「うおおおおおおおおおおっ!!」

全身全霊を込めてグングニールが放たれる。

螺旋状に回転しながら空間を切り裂き奔るグングニール。

その照準は寸分の狂いもなくシルクの心臓を目掛けていた。

オハンの叫びはもはや何の意味も成さない。

回避不能のそれは受ける以外の選択肢はなく。

うければ必ず槍は標的を居抜きその生命を絶つ。

『シルク信じて』

「何を今更。

分かってるよミカエル」

シルクは今持ち得る総ての魔力を振り絞る。

タラリア、太陽神の剣、オハン、鷹の翼は消えていった。

全ての魔力が大天使の羽衣一つに集約されていく。

羽衣は光り輝き、それまでの長い布の形から純白のローブへと形を変えていった。

天使の加護をその身に纏いシルクは戦神の武具を迎え撃つ為に構える。

グングニールは空感も時間も全てを巻き込んでシルクの生命を刈り取ろうとしていた。

回転する槍の切っ先がシルクの胸を貫こうとした時だった。

「・・・えっ」

翡翠の光がシルクの視界を舞い、シルクは抗うこともできずに壁に打ち付けられる。

グングニールはその翡翠の光さえもを巻き込み引き裂くと、おびただしい量の鮮血を振りまいて停止した。




< 304 / 406 >

この作品をシェア

pagetop